キンリョウヘン(蜜蜂蘭)とその育て方

キンリョウヘンは中国南部に自生する東洋蘭(シンビジウム)です。長さ約20~30cmの細い葉があり、アーチ型の花茎を伸ばして4~5月に花を咲かせます。日本ミツバチだけを誘引する植物として古くから利用されてきた貴重な植物です。西洋ミツバチに対しては全く効果がありません。



キンリョウヘンとは

キンリョウヘンの苗の写真

キンリョウヘン(金陵辺、金稜辺、蜜蜂蘭ともいう)は シンビジウム楽天 (シンビジューム)の仲間で、日本ミツバチが好む蜜を分泌する蜜腺と呼ばれる部分があり、不思議に他の昆虫が嫌う蟻と日本ミツバチだけを誘引する性質があります。日本ミツバチがキンリョウヘンに集まると花が隠れて見えなくなるほどになります。

この写真はキンリョウヘンで日本ミツバチを捕獲しようと苗を購入したものです。最近は日本ミツバチそのものが減ってきているので、キンリョウヘンに登場してもらう場面があるでしょうか。

金稜辺とミツバチの巣箱で日本ミツバチを何度も捕獲しました。やはり、キンリョウヘンの効果はすごいものです。とにかく、キンリョウヘンの花を巣箱の近くに置いておくだけですから。

金稜辺の花

金稜辺の花の写真

この写真は金稜辺ではないけど、日本ミツバチを誘引するとのことで、もらった蘭に花が咲きました。

咲いた花を見ると正に金稜辺のようです。花があまり大きくないので、金稜辺の原種ではないかと思います。

一度も室内に取り込まなかったので、花が咲くのが遅く、日本ミツバチの分蜂の時期が過ぎてしまいました。来年は早めに室内に取り込んでみたいと思います。(撮影、2010年5月22日)

日本ミツバチ(和蜂)とは

日本ミツバチ(和蜂)は日本に古くから居るミツバチで西洋ミツバチのように蜂蜜(ハチミツ)を多く集めるミツバチではありません。日本ミツバチは天敵のスズメバチに対抗する手段を備えています。スズメバチが巣に進入してきても、集団でスズメバチに取り付いて体温でスズメバチを熱死させます。

日本ミツバチをキンリョウヘンで捕獲する

金稜辺の花に誘引された日本蜜蜂の分蜂群

日本ミツバチは女王蜂を中心に働き蜂たちと集団で暮らしています。この群れが栄えて大きくなると、女王蜂を産んで群れを2群に分けて巣から出ていきます。これが分蜂と呼ばれるものです。

この時、古い女王が巣から働き蜂を連れて出て行きます。これを捕獲する為の巣箱が「待ち桶」または、「待ち箱」と呼ばれるものです。待ち桶だけでもミツバチを捕獲することができますが、この時、シンビジウムの仲間のキンリョウヘンという蘭(ラン)の花を併用すると捕獲率が高くなります。

この写真は、キンリョウヘンの花に日本ミツバチの分蜂群が集結して蜂球を作ったものです。このような植木鉢を空の巣箱の近くに置いておきます。

金稜辺をそのまま使ってもよいのですが、金稜辺全体には細かい目の網を掛けた方が良いでしょう。これはミツバチの熱で花がしおれてしまうからです。ミツバチが受粉すると花が長持ちしないとの情報もあります。

金稜辺の開花時期の調整

金稜辺蘭の開花時期を調整するのは難しいものです。キンリョウヘンが一度に咲いてしまわないように開花時期の調整をしましょう。日本蜜蜂の分蜂の期間が長いので、何鉢かのキンリョウヘンを一度に咲かせないで、開花の時期を調節して順番に開花させるのが最良です。

早咲きさせる場合は、暖かくてよく日の当たる所へ置きます。場合によっては温室栽培します。私は大型のパイプ温室で育てています。遅咲きさせる場合は、涼しくて日のあまり当たらない所へ置きます。時期の微調整には置き場所を変えてやります。

キンリョウヘン(シンビジウム)の栽培方法

栽培に適した場所
冬季には、冷たい北風が当たらない霜の降りない場所の屋外で栽培します。日光を好むので日当たりの良い場所に置きます。真夏は葉焼けを起こすのであまり直射日光に当てない方が良いでしょう。
温度の管理方法
冬季には、最低温度が10度C以下になるようにすると花付きが良くなります。しかし、凍結しないように注意してください。夜間の温度は15度C以上にならないようにしましょう。
水のやり方
春~夏は、早朝または夕方に十分水やりします。秋から冬には水やりを少し控え、あまり乾燥しない程度にします。
肥料のやり方
春~夏の成長期に有機質の固形肥料をやり、月に2~3回薄い液肥をやります。真夏の高温期(最高気温が30度C以上の日)には肥料を控えます。
植え替え時期と方法
開花が終わって新芽が伸び始めたら植え替えを考えます。植える土は軽石やバークや水苔や鹿沼土を混合して使います。一般的に寒蘭や春蘭用に使う土を使います。植える鉢は少し小さめの鉢を使います。鉢が大きいと花が咲きにくいです。
株分け方法
大きくなった株は株分けをして増やします。株分けは3バルブ以上を1株とするように株分けをします。バルブを避けて包丁やへらや手等で丁寧に分離します。葉の出ていない枯れたバルブを取り除いて、枯れていないバルブを残すようにします。株分け後約1週間は半日陰に置きます。
ウイルス病の予防
一般的に蘭のウイルス病は、一度発病すると治すことが難しいので、 ウイルス消毒液楽天 「ビストロン」等で予防します。

シンビジウムとキンリョウヘン

元々シンビジウムは花や株が大きく、栽培するには大きな温室や設備が必要でした。他方、キンリョウヘンは小型で花芽がつきやすい性質をもっていました。この為、現在の花を観賞するシンビジウム(シンビジューム)は、キンリョウヘンを親にして交配したものが多いのです。