排水の悪い水田の暗渠(あんきょ)の作り方
2006年は田圃(水田)の排水(中干し)に失敗して、稲が倒れて散々な目にあいました。排水の悪い田圃の排水をやり易くする為に暗渠を掘ることにしました。冬の間の農閑期にすることにしました。私のやった方法が良いかどうかわかりませんが、参考になりましたら幸いです。
暗渠(あんきょ、アンキョ)は地下にあって見えませんが、見える普通の排水の溝は明渠(めいきょ、メイキョ)または開渠(かいきょ、カイキョ)と言います。
重機による田圃(水田)の暗渠(あんきょ)掘り
写真のように我が家の水田を深さ約1m幅約50cm長さ約45mをバックホウ(バックホー)で掘りました。暗渠水の出口は深さ約1.2m、暗渠の先端の深さを約80cmにして、その間は適度な勾配をとりました。
元々ここは河原だったらしく大きな石がごろごろ出て来ました。あまりに大きな石は掘り出せないので、そこだけは少し迂回して掘りました。重機が無ければとうていできない作業でした。
暗渠の掘り方はこの写真のように畦の方から後ろへ向かって掘っていきました。キャタピラーを暗渠の両側にまたがるようにして掘りますので、暗渠をあまり広くしないようにします。土を掘る時、一般的には機体を安定させる為に、排土板を下げてやりますが、今回は機体の下に暗渠が来るので、一度掘った所では排土板は使わずに掘っていきました。
まず上土(表土)を掘ってバックホーのアームをいっぱいに使って溝(暗渠)の右側のできるだけ遠くに置いていきました。これを連続して45m分掘りました。溝の左側は様々な作業をする為にあけておきます。
次に下土を掘って溝のすぐ右側に置いていきました。大きな石は先に運び出す為に溝の左側に置いていきました。これを連続して45m分掘りました。ここまでの作業に約2日間(約10時間)かかりました。2007年の1月2日と3日にやりました。
暗渠用のコルゲート管とVPを配置します
暗渠の一番底に、小さい穴がたくさん開いたΦ75mmの暗渠用蛇腹パイプ ( コルゲート管楽天 、S型、有孔、巻物、Φ75、L=30m物) を約40m(30m+10m)入れて水の出口はVU65の ビニルパイプ4mを接続しました。この接続にはΦ1.4mmのステンレス線で縛りました。暗渠管の先端には先端用のキャップを取付けました。暗渠管の勾配を確認しながら配置するのに約3時間かかりました。
暗渠用のパイプは蛇腹パイプではなくて、硬質ビニルパイプで小さい穴が開いたものに、不織布を巻いたものもあるようです。
このパイプの周りに、掘って出てきた小さい石を手作業で並べて、市販の砕石(バラス)をパイプが見えなくなるまで入れました。この作業に約3時間かかりました。この上に、近所のため池の中に沢山溜まっていた砂を取ってきて入れました。砂を運搬する方法は、池の砂をバックホーで掘って積み、荷台がダンプカーのように油圧で動く運搬車で運びました。砂を運ぶ作業に1日約5時間を費やしました。
次に砂の投入です。砂の厚さは約10~15cmです。道路から近い部分は一輪車(ネコグルマ)とスコップを使って手作業でやりましたが、道路から遠い部分はバックホーで運んで投入しました。もっと多く入れた方が良いのでしょうが、労力が大変なので適当なところで止めました。この作業に1日約5時間かかりました。
砕石と砂の代わりに籾殻(モミガラ)を入れたり、竹や木やイノシダの茎(細くて丈夫なシダの茎)を入れる人もありますが、長年の間に腐って効果が無くなる可能性があると思います。
暗渠の埋め戻し
掘った薄茶色の下土(したつち)をまず元に戻してやります。この作業には排土板で押すと上土が邪魔になるので、排土板を使わずに主にバケットで土をすくったり、バケットで土を手前に引いて戻しました。バックホーを土が置いてある暗渠の反対側に配置して、暗渠と平行に移動しながら作業しました。
その上に黒色の上土(うわつち、表土)を戻します。この作業には、残った表土だけなので、排土板を使って作業をしました。この時、大量の土を移動するには、排土板を使って前進で土を押していくとうまく作業ができます。またバケットの横を使って、バックホーを旋回させて土をならしてやったり、バックホーのバケットで土を引いても能率良く作業ができます。
最後に土を平らにするには、前進で排土板を使うよりも、後進で排土板を使う方がうまくいきます。前進で排土板を使って均そうとする場合、ちょっとでも掘り過ぎた後を前進するとキャタピラーが掘った部分にかかり、前部が下がって更に掘り過ぎとなります。その反対に、掘り過ぎたからと、排土板を少し上げると、今度は土を掘っていない所にキャタピラーがかかり、前部が上がって更に浅くなります。平らにするつもりが、反対にデコボコになってしまいます。この場合は、後進で排土板を使うとうまくいきます。この辺はやってみるとよくわかります。
下の方にあった大きな石がたくさん出てきて、これを集めて捨てるのにも一苦労しました。この作業にはバックホウが大活躍しました。手作業ではとても無理です。大きな石をかなりたくさん捨てたので、土の量は多くもなく少なくもなく適度な量となりました。埋め戻しにかかった時間は1日約5時間でした。
暗渠ができ上がってからも、小さい石が田圃の表面に出て来るので、何回も小石を探して取り除きました。雨の後、土が乾いてから石を拾うと、石が白く見えてやりやすいようでした。この作業だけで延べ約5時間かかりました。
暗渠を作った最初の年の代掻きをトラクターですると、トラクターが暗渠の所で沈んで動かなくなると聞きましたが、やってみると何も問題はありませんでした。
暗渠の出口処理と排水口の設置
この写真の中央の細いVU65パイプが暗渠の出口です。水田に水を溜める為には、この先端にネジ止め式のキャップを塩ビの糊で取り付けます。秋~春の間は排水と凍結防止の為にキャップを外しておきます。
暗渠排水口の下には幅15cmの使い古しの排水溝を入れて土が流れるのを防止しました。
暗渠を作ったついでにオーバーフロー式排水口も新たに作りました。VU100の硬質ビニルパイプを使いました。この写真の一番上の45度に曲がったパイプです。このビニルパイプは接着していません。これらの作業には1日約5時間費やしました。
これまでの作業にかかった日数と時間は、妻と二人で合計約8日、約40時間となりました。私と妻が主に日曜日にしか作業ができないのと、休憩時間を除いているので、1日を約5時間としています。あまり参考にならないかもしれません。
水田用暗渠の断面図
解り易くする為に水田用暗渠の断面図を作成しました。暗渠の平均の深さは約1mです。砕石と砂の厚さは20~30cmにしましたが、もっと厚くした方が良かったかも知れません。
暗渠を使ってみると、暗渠パイプの深さはもう少し浅い方が良かったような気がします。暗渠の水を抜いた時の水の抜けが少し遅い感じです。
表面に降った雨水を早く排水する為には、暗渠ではすぐには効果がありません。やはり田圃の表面に溝(明渠)を掘ってやらないとダメなようです。近所の人は毎年、明渠を掘っているようですが、労力が大変ですし、せっかく掘った溝を猪が埋めてしまうのです。私は雨が降った後、少しくらいは水が溜まってもかまわないので、暗渠に任せてそのままにしています。