籾摺り機の使い方とメンテナンス
稲刈りの後籾の乾燥をしたら籾摺り作業です。大規模農家では自前で籾摺り作業をする所が多いのですが、私のように小規模の農家では籾の乾燥と籾摺り作業は外部の専門業者に依頼することが多いのです。籾摺り機の使い方とメンテナンスについてです。
籾摺り機について
従来、私は籾乾燥機を所有していましたので、籾摺り作業だけを業者に依頼していました。しかし、籾摺りをする為には業者の所まで籾を運搬しなければなりません。そして籾摺りが出来上がったら引き取りに行かなければなりません。仕事を休んで行かなくてはならずこれがとても面倒だったのです。また籾摺り料金がけっこう高くて米作りでは儲からない原因にもなっていました。
そこで数年前から、私は中古の籾摺り機を購入して自分で籾摺り作業をすることにしました。やってみると、うまくいかないこともありましたが、試行錯誤して今では簡単に籾摺りをすることができるようになりました。
籾摺り機の籾摺り方式(ゴムロール式、衝撃式)
籾摺りの脱皮の方式には大きく分けてゴムロール式と 衝撃式楽天 があります。
ゴムロール式籾摺り方式
ゴムロール式は回転するゴムロールの間を籾が通り抜ける時、二つのロールが回転する速度差によって籾を摺って脱皮させる方式です。籾の水分量が多いと籾摺りの効率が極端に落ちるので、籾の水分量を15%以下にしておく必要があります。
ゴムロールの大きさによって籾摺りの能力が決まります。2~5インチが一般的です。
衝撃式籾摺り方式
衝撃式(インペラ式、ジェット式)は高速で回転する羽根車によって飛ばされた籾を壁面に衝突させて籾殻を除去する方式です。この方式では籾の水分量が多くてもうまく籾摺りができる特徴があります。小型の籾摺り機に採用されています。
籾摺り機の選別方式(遥動式、回転式、万石式)
籾摺り直後では、まだ籾と玄米が混合状態です。これは、一度に籾を100%脱皮させると、胴割米や砕け米が発生して品質が低下するので、脱皮の能率をわざと落としているからです。だから、籾摺り後に籾と玄米の選別を行ない、脱皮されなかった籾を再び籾摺り工程に掛けて、最終的にほぼ100%籾殻が取り除かれた玄米になります。この籾と玄米を選別する方式に遥動式、回転式、万石式の3種類があります。
遥動式選別方式
揺動式は窪みのある傾斜をつけた揺動板を水平、垂直方向に同時に遥動させ、比重や摩擦係数の違いから玄米と籾の選別を行う方式です。昔、手動式の箕(み)で穀物をより分けていましたが、それに近い方式です。うまく調整すれば、ほぼ100%玄米を選別できます。これは揺動選別式の石抜き機と同じ原理です。
回転式選別方式(ロータリー選別方式)
回転式(ロータリー式)は内側に窪みの付いた円筒形の物を回転させて、籾と玄米を円筒形の筒の中で飛ばせて、その比重や重心位置の違いにより、落下位置が違うことを利用して選別する方式です。100%玄米を選別するのは困難ですが、取り扱いが簡単です。
万石式選別方式
万石(まんごく)式は傾斜させた網目の上を脱皮させた籾と玄米を通すことで玄米と籾を選別する方式です。網目の大きさの選定や傾斜角の調節が難しく、取り扱いには熟練と技術が必要です。古くからある方式です。
籾摺り機の使い方
この写真は私が使っているヤンマーロータリーハラーです。機種は RHM25 ロータリー選別式2.5インチロールの籾摺り機です。あまり使わないので、中古で安く入手しました。新品では元は取れません。
動力はガソリンエンジンです。この籾摺り機を使う前には3相200V動力のサタケの遥動式を使っていたのですが、あまりにも古くて調子が悪かったので買い替えました。
籾摺り機から出た玄米を米選機に通して小米を選別します。サタケのライスグレーダーというロータリー式の選別機です。
籾摺り作業は秋の収穫のすぐ後で約半分の量の籾を処理しています。後の半分の籾は穀物乾燥機の中で半年間保管して、4月頃に籾摺り作業をしています。こうすることで少しでも美味しい米を食べることができます。
籾摺り機の使用手順
- 各部の掃除と点検をします。
- 機械的に動く部分でゴムでない所には注油又はグリスアップします。
- 籾摺り機を水平でガタのないように設置します。水平はとても重要です。
- 籾殻の出るダクトと玄米の出るパイプを取り付けます。
- 小米の選別機や袋詰めの機械を設置します。籾摺り機を運転する前にこちらのスイッチを先に入れます。
- ロールの間隔を規定通りに調整します。
- 仕上げ米選別調節を精度最良の位置(すり始め、すり終わり)にします。
- 籾送りのレバーは閉めておきます。すり米量の調節は最少量の位置にしておきます。
- 燃料タンクにガソリンを入れて燃料コックを開いてエンジンを掛けます。
- 規定の回転になるようにエンジンの回転数の調整をします。
- 籾送りのレバーを開いて、すり米量を増やして少しずつ籾摺りをしてみます。
- 籾摺り直後の籾の状態(脱ぷ率という)を見て玄米が85~90%程度になるようにロールの間隔を調整します。
- 選別胴の中の米の量と仕上がり状態を見ながら、送る籾の量を調整します。
- 遥動式や万石式では、棚の傾きや選別位置等の調整をします。
- 出てきたシイナは再度籾摺り機を通してやります。
籾摺り機を使う時の注意とメンテナンス
- 籾摺り精度や能率を上げるには、籾の水分量が適度でないといけません。水分量が13~15%になるように、籾を乾燥させておきます。
- 一年間使わなかった籾摺り機を使う時は、ネズミが籾摺り機の中に巣を作って中が詰まることがあります。使用前にはよく点検しましょう。
- ゴムベルトのヒビ割れや切れや傷みに注意して、悪い時は早めに交換します。
- 籾と玄米を跳ね上げるスロワの羽根ゴムは、羽根ゴムを1周させケースの内面と羽根ゴムの隙間が一番狭い位置で、約1mmになるように調整します。
- 籾摺り機の使用後は各部の掃除をして、籾殻の排出口に蓋をしておきます。蓋を忘れるとネズミが入ることがあります。
- ガソリンエンジンを長期間使用しないで格納する時は、燃料タンクの中とキャブレターの燃料は抜いて空にしておきます。そうしないとジェット部の小さい穴が詰まることがあります。
- その他にも各部を時々点検して、不具合な所は修理しておきます。
籾摺りの能率と精度
籾摺りの能率(単位時間当たりの籾摺り量)を上げると、籾摺りの精度(仕上がりの米に含まれる籾の割合が少ない程良い)が悪くなります。このふたつは相反するので、この兼ね合わせで作業をすることになります。籾の水分量も籾摺りの能率と精度に影響します。
玄米食をするのなら、できる限り籾摺りの精度を上げておく必要があります。白米食だけをするのなら、少々精度が悪くても、精米の時に籾は無くなるので問題はありません。5分づきの米を食べることも考えるとやはり籾摺りの精度を上げるほかありません。この辺の兼ね合いが難しいところです。